教育実習日誌〜先生と生徒の間〜

おそらく、薄々感づいているだろう。


膝の上で両手を握って、俺の顔をのぞき込んできた。



「先生、美羽は・・・・・・もしかしたら妊娠してるんじゃないですか?」



やっぱりな。



「そうだ。今、切迫流産でここの産婦人科にあるMFICUっていう病棟に入院してる」


「一人で、ですか!?」


「いや、実は、うちのクラスの教育実習生のお母さんが付き添ってくれているんだ」



不思議そうな顔をしている吉川に、菫が今までしてくれたことを説明した。


「・・・・・・という事だ。

安西先生は、教育実習期間中で本当に忙しい中、一生懸命木内のために動いてくれた。

男の俺じゃ、女子トイレで吐いている木内の様子に気づくことはなかっただろう。

いいか、安西先生が木内からの伝言を頼まれてきたから、心して聞け。


『私は、絶対に産みます』


だそうだ。

俺が、木内の担任としてできることには限界がある。

これからどうするのかは、本人同士、それから保護者との話し合いで決めることだ」


冷たいようだが、教員が介入できる話ではない。

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