教育実習日誌〜先生と生徒の間〜
「指輪、外したほうがいい」
覚悟していた事だった。
教育実習中、高価なアクセサリーは外すべきだから。
見る目がある奴には判るはずだ。
本気のリングであることが。
生徒からはもちろん、他の教員や管理職の目もある。
菫の立場を考えると、少しでもマイナスになる要素は減らさなくてはならない。
菫と一緒にいられる2週間、あくまでも俺は指導教諭だ。
俺のクラスで実習をする、卒業生であり大学生。
それ以上の感情を持っていること、ましてや既に両家公認の仲であることは決して気づかれてはならない。
R大学からお預かりしている、大事な実習生。
俺との関係が公になったら、単位がどうなるか心配だ。
手心を加えたと思われたくない。
やはり、実習期間中はなるべく実習に専念できるように、ここへ出入りさせるのは控えるべきだ。
辛いが、菫のために。
菫、少しの間、我慢できるよな?
俺の手の真ん中に置かれた、ほんのりあたたかいリング。
「……うん。バレたら大変だね」
リングと一緒に、菫の涙も俺の手のひらに落ちた。