教育実習日誌〜先生と生徒の間〜
挨拶もそこそこに、本題へ。
「それで、木内の様子はどうなんだ?」
『絶対安静のままです。そろそろ心拍が確認されていてもいい頃らしいのですが、まだ……』
「そうか。明日以降、とりあえず病欠だな。だが、あまりにも長期病欠だと、あちこちに理由を書かなくてはならなくなるんだ。
今後どうするのか、話し合いはしたんだろ?」
『はい。でも、結果がまだ出ないんです』
「そりゃあ、こんな急な話だから、いきなり結論を出そうにも難しいよな」
先程から菫がものすご〜く聞き耳をたてている。
だが今回は、また吉川が余計な事を喋っても聞かれないために、ハンズフリーモードにはしていない。
『いえ、それより……美羽のご両親は、美羽がそのまま流産してしまうことを望んでいるようなんです。
それが叶わないなら、中絶させようと……』
厳しいことを言うようだが、ご両親の気持ちも解る。
「15歳の娘の将来を考えたら、それはごく当たり前の反応だと思う。
子どもを産み育てるってことは、そんなに甘いもんじゃないぞ。
木内のご両親は、娘が苦労するのを見たくないんだろう」
『いえ……何となくそんな感じじゃなくて……。
世間体とか、高校を辞めることとか、そういう表面的なことばかりで、僕が見ていても美羽の気持ちになって考えていないっていうか……』
「そうは言っても、そこを気にするのも親としては当たり前だ。
それで、お前は具体的にこの先どうしたいのかちゃんと木内のご両親に話したのか?」