教育実習日誌〜先生と生徒の間〜
お前がちゃんと木内を守る覚悟があるのかっていうのが、一番大事なんだが。
こいつ、頭はいいが、どうもコミュニケーション能力に難あり、だよな。
『僕や美羽の気持ちなんて、聞く耳持たずって感じだったんです。
一方的に美羽を責め立てて。
本当なら僕が一番悪いのに、お父さんは寝ている美羽を殴ろうとしました。
僕とうちの両親とで必死に止めましたけど……』
「ふうん。まあ、ご両親の手前、お前を責める訳にはいかなかったんだろ。
医者と医者の息子だからな。
木内のお父さんは、漁師で、昔で言うところの網元って奴だ。
大勢の漁師と漁船を束ねて、漁業水域ぎりぎりのところを命がけで操業する海の男って感じだな。
お前の親父さんとはタイプが違うさ。
網元の奥さんだから、おそらく木内のお母さんも従順で夫に逆らえないタイプだろ?
俺も、下宿生の家庭訪問で一度しか会ったことはないけど、そんな印象を受けた」
『そうなんです……何だか今日は冷静に話せるような雰囲気じゃなくて、とりあえず僕たちの気持ちだけ伝えて終わりました』
「それじゃあ、自分の希望は一応言えたんだな?
何て言ったんだ?」
『僕と美羽はいずれ結婚して、二人でこの子を育てたいって言いました』
きっぱりとそう言った吉川の声が、今までになくしっかりしていた気がした。