教育実習日誌〜先生と生徒の間〜
「安心して、内緒にしておいてあげるから。
でも今度、松本先生には時間割で無理を聞いてもらっちゃおうっと」
竹森先生は、フレアースカートの裾をひらひらさせてくるんっと私の方を向いた。
「ここだけの話、安西先生が教員を目指す、目指さない、どっちを選んでもいいと思う。
実習に行ったからと言って、無理して採用試験なんて受けなくてもいいの。
人にはそれぞれ、自分にしかできない役割があると思うから。
変に実習校や指導教諭に義理立てする必要はないのよ、覚えておいてね」
「はい」
……逆に、気を遣ってもらっちゃったよ。
私の返事を聞いて、竹森先生はまたくるりと回って進行方向へ向き直り、歩き出す。
「さて、と。
職員室でもうちょっと仕事して、今夜のメニューは何にするのかも考えなくちゃ」
そんな話をしているうちに、職員室へ着いた。
と、ちょうどそこへ、外線電話が入り、竹森先生が対応している。
「・・・・・・少しお待ち下さい」
電話のすぐ横にある、職員室用校内放送スイッチを押していた。
「お呼びだしいたします。
松本先生、お電話が入っています。
至急職員室へお戻りください。繰り返します・・・・・・」
先生への急ぎの電話だったみたい。何だろう?