教育実習日誌〜先生と生徒の間〜
「私が大学生になってからだよ。
本当は卒業式の日に、私が告白しようとしたんだけど、話を聞いてさえくれなくて……」
「ああ〜、あの時ね!!
だから卒業旅行で落ち込んでたんだ……納得」
裕香がそっと私から離れて、それから。
「今日、その話が聞けて良かったよ。
これで、授業も頑張れそうだし……」
一瞬、言葉を飲み込むような沈黙の後。
腕時計をちらりと見た裕香が、視聴覚室のドアに向かって歩き出した。
あ、そろそろ時間?
私も慌てて後ろを追いかける。
ドアを開けて、私のために押さえていてくれた裕香が、そっと呟く。
「……危うく親友の彼氏を好きになっちゃうところだったから」
「え?」
驚く私を笑い飛ばすように、澄みきった美声が廊下に響き渡る。
「だから、ブーケは絶対私に向かって投げてよね!!
私、演奏家にも教員にも向いてないって判っちゃったから、あとはもう、目指せ玉の輿よ!」
私の背中をばしん、と叩きながら、約束ね、と明るく笑っていた。
裕香の気持ちを、どう受け止めたらいいのか。
答えが見つからないまま、職員室へ急いだ。