教育実習日誌〜先生と生徒の間〜
いつものように職員室で、先生の隣に座って他人行儀なご挨拶をしていたら。
離れた席から、裕香がこっちを見てにっこり笑いかけてきた。
いつも通りの裕香の様子に、ちょっとほっとしながらも、私はうまく笑えなかった。
ちゃんと口角を上げて、自然に笑えた自信は全くない。
『親友の彼氏を好きになりかけた』
それって、当然先生のことだよね!?
指導案作りができなくて困っていた裕香のため、先生に「何とかしてっ!」って頼んだのは私。
『好きになりかけた』きっかけを作ったのは私、だと思う。
裕香と先生が『付き合ってる』と間違われる位、仲良さそうに歩いてたっていう話を聞いた時、何も心配していなかった。
でも……裕香の立場だったら。
指導教諭でもないのに、ここまで手を差し伸べてくれた頼りになる先生。
客観的に見ても「いい男」だもん。
もちろん、見た目だけじゃなく。
先生に彼女がいるってことは、生徒の間では有名らしいけど、卒業生の裕香は当然知らないはず。
ごめん、裕香。
『好きになりかけた』っていうことは、まだ好きになる前だったんだよね?
本気で失恋する前だよね?
そうじゃなきゃ、この実習は裕香にとって辛すぎるもん……。