教育実習日誌〜先生と生徒の間〜
指導教諭の思惑
【健の指導教諭記録】
岩谷の授業が終わり、岡崎先生はすぐに準備室へ入っていった。
少し岡崎先生に話をしようと思い、音楽室から廊下へ出て別の入口から準備室へ向かう。
放課後、今の授業の研究協議が行われる。
授業者と授業を参観した教員が話し合うものなのだが、俺は社会科の実習生の研究協議へ出席しなくてはならないので、こちらに顔を出すことはできない。
当然ながら、岡崎先生は気づいているはずだ。
岩谷の指導案が、他の「誰か」に教えてもらって書いたものだということに。
一応、いきさつを説明しておかなくては、いざ研究協議で他の教員から突っ込まれたときに困ると思った。
準備室のドアをノック。
返事が聞こえてすぐ中へ入る。
指導案に何か書き込んでいたらしい岡崎先生が、俺を見て驚いていた。
「松本先生でしたか。何か?」
明らかに歓迎されていないようだが、まあいい。
「お忙しいときにすみません。3分だけお時間をください」
「かまいません。次は空き時間ですから、岩谷先生と少し話でもしようかと思っていました」
「ありがとうございます。では早速本題に入ります。
岩谷先生の指導案は、I高校の五十嵐先生にご指導いただいたものです。
岡崎先生も色々と事情がおありのようなので、私が五十嵐先生のご主人を通じてお願いしました」