教育実習日誌〜先生と生徒の間〜
岡崎先生は、少し驚いたような顔をしていた。
まさか俺が手引きしたとは思っていなかったのだろう。
「私の実習生が岩谷先生の親友でして。
友達同士で情報交換するうちに、岩谷先生が困っていることに気づいたようです。
岡崎先生はお忙しいようなので、他に指導案の作り方を教えてくれる先生はいないか、と相談されました。
当然、校内にはいませんから、五十嵐先生を私が紹介したのです。
無断で差し出がましい真似をしました。すみません」
頭を下げた。
この後、岩谷が責められたら可哀想だ。
すると。
「私の方こそすみません。
本当は、私がちゃんと面倒を見なくちゃいけないんです。
一番謝らなくてはならないのは私です。
いらいらして彼女に八つ当たりした時もありました。
もう、先生も昨日の私をご覧になって、お気づきになりましたよね?」
やっぱり、昨日の病院はそのためだったのか。
俺が頷くと、岡崎先生が話を続けた。
「不妊治療を始めて、もうすぐ6年になります。
今年で40になりましたから、もうそろそろタイムリミットです。
今年度ダメだったら、諦めようと思っていますけどね。
昨日は、どうしても病院へ行かなくてはならない日でした。
自分の体のリズムが関係しているので、違う日に振り替えられないのが、不妊治療の辛いところです」
そう言って苦笑いを浮かべている。