教育実習日誌〜先生と生徒の間〜

「そうでしたか。

でも、松本先生に打ち明けておいて、良かったかも知れません。

これから先も、時間割のことで無理なお願いをしなくてはならないかも知れないので。

昨日、ちょっといい結果が出たので、ひとつ前進したんです。

ほんのちょっと前へ進んだだけなので、まだまだ道は険しいのですが……」



そんな険しい道のりを、大金を投じつつ懸命に歩む人もいれば、突然の妊娠で人生の岐路に立たされる高校生もいる。


やりきれない思いを抱えつつ、岡崎先生は治療に通っていたのだろう。


俺には、この程度のことしか言えないが。



「いい結果が出ることを祈っています。

時間割はできるだけ、そちらのご都合に合わせますから。

実習生の公開授業が終わったので、少しのんびりできるといいですね。

岩谷先生に終日授業させて、先生は温かく見守ってくれたら、どちらにとってもいいと思うのですが」



岡崎先生が、くすっと笑った。



「そういう見方があるんですね。

実習生に代わりの授業をやってもらって、私は楽ができる、と?」


「ええ。指導案と事前研修がしっかりできていれば、指導教諭は授業中、表だって動く必要はありませんから。

岩谷先生は、高校在学中、コツコツ勉強していた努力型の生徒でした。

先生が適切な指示を出したら、きっとそれを忠実に守っていい授業ができると思いますよ」


「わかりました。私が岩谷先生を頼れるように、今日の事後研修できちんと話し合いますね。

彼女にも申し訳ないことをしました……」



そんな話をして、音楽準備室を出た。


……しまった! 6時間目のLHRに5分遅刻だ!



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