教育実習日誌〜先生と生徒の間〜

全校朝会が終わり、実習生はそれぞれの担任と一緒にHRへ向かう。


先生と廊下を歩く。ああ、緊張するよ~。


「安西先生、挨拶の言葉は考えてきましたか?」


「はい、一応……」


先生、他に人がいなくても、この話し方を変えようとしないんだね。


さすが、なんだけど、ちょっと寂しいな。


「昨夜、色々考えましたが……生徒からの質問で、答えにくいものがあった場合は『プライベートな事なので、お答えできません』と言ってもかまいません」


え? それってこういう事?


「それでは、仮に生徒から『彼氏はいますか』という質問が来た場合、そう答えてもかまわない、ということでしょうか?」


立ち止まって、私の方を見る先生。


4年前とほとんど変わらない、先生の学校での姿にきゅんとなる。


「私は嘘をつくことが嫌いです。だから、安西先生にも嘘をつかせたくはありません。

ノーコメントで通す、という方法もあるのです。

ただし……この場合のノーコメントは、生徒側からすると『彼氏がいる』という風に受け取られることを覚悟してください。

いない場合ははっきりと『いない』と答えるのが普通ですから」


……先生、つまり、私にノーコメントと言わせつつ、彼氏の存在を匂わせる作戦に切り替えたの!?

< 22 / 290 >

この作品をシェア

pagetop