教育実習日誌〜先生と生徒の間〜
全校朝会が終わり、実習生はそれぞれの担任と一緒にHRへ向かう。
先生と廊下を歩く。ああ、緊張するよ~。
「安西先生、挨拶の言葉は考えてきましたか?」
「はい、一応……」
先生、他に人がいなくても、この話し方を変えようとしないんだね。
さすが、なんだけど、ちょっと寂しいな。
「昨夜、色々考えましたが……生徒からの質問で、答えにくいものがあった場合は『プライベートな事なので、お答えできません』と言ってもかまいません」
え? それってこういう事?
「それでは、仮に生徒から『彼氏はいますか』という質問が来た場合、そう答えてもかまわない、ということでしょうか?」
立ち止まって、私の方を見る先生。
4年前とほとんど変わらない、先生の学校での姿にきゅんとなる。
「私は嘘をつくことが嫌いです。だから、安西先生にも嘘をつかせたくはありません。
ノーコメントで通す、という方法もあるのです。
ただし……この場合のノーコメントは、生徒側からすると『彼氏がいる』という風に受け取られることを覚悟してください。
いない場合ははっきりと『いない』と答えるのが普通ですから」
……先生、つまり、私にノーコメントと言わせつつ、彼氏の存在を匂わせる作戦に切り替えたの!?