教育実習日誌〜先生と生徒の間〜
それからしばらくして、トモアキ先輩が病室へ現れた。
菫先生のお母さんと挨拶をして、久しぶりに先輩と二人っきりになる。
泣いて泣いて、言葉にならない私の手を握って、先輩はとても困惑した表情を浮かべていた。
私はやっぱり、先輩を困らせるだけの存在になってしまった。
それでも、私は先輩もお腹の赤ちゃんも、どっちも大事……。
どうしても、この子を産みたい。
だって、先輩の子だもの。
私を好きだって言ってくれた、私も大好きな人の赤ちゃんをあきらめるなんてできない。
たとえ、それが先輩にとって迷惑になるとしても。
「今までずっと、俺のせいで不安にさせてごめん。
ミウのこと、大事にしたいのに、俺が一番傷つけてた。
これからの事、話し合おう。
だから泣かないで」
しゃくりあげながら、一生懸命先輩に自分の気持ちを伝えた。
どうしても産みたい。
高校中退でもかまわない、高校はやり直せるけれど、この子は世界にたった一人だけ。
だって、先輩の子だから……。
私の気持ちを最後まで聞いてくれた先輩が、はっきりとこう言った。
「許されるまで、俺も必死に説得するよ。
だから、赤ちゃんとミウと俺、三人で幸せになれる方法を選ぼう」
せっかく止まった涙が、また溢れてきて止まらなくなった。