教育実習日誌〜先生と生徒の間〜
「木内さん、ここは妊婦さんの集中治療室なので、大人数で長居はできません。
場所を移して親同士で話し合いましょう」
私を気遣って、先輩のご両親がうちの両親をどこかへ連れ出してくれた。
正直、ほっとした。
病室から両親が出ていく前、勇気を出してもう一度伝えた。
「お父さん、ごめんなさい。
私は赤ちゃんを産みたいの」
お父さんは、返事をせずに出ていった。
後に残ったのは、先輩と私。
「……ごめん。一番責められるのは俺なのに」
点滴の針が刺さっていない方の手を取って、握ってくれる先輩。
「俺がちゃんと避妊しないのが一番悪いって、松本先生にも言われた。
うちの父もそう言ってた。
一番大事なミウも、ミウのご両親も傷つけて、最低だよな、俺……」
先輩も、私の担任の先生と、自分のお父さんから色んなことを言われたはず。
家族も巻き込んで、みんなを傷つけることになるなんて、私達は想像もしなかった。
知らなかったでは済まされない。
だって既に私のお腹には赤ちゃんが育っているんだから。
菫先生のお母さんが言った言葉を思い出した。
『一度産むと決めたなら、過ぎたことをいつまでも悩まないの!
これからの事を、相手とよく話し合いなさい』
そう、二人で後ろ向きになってはいられない。
ママになる私は、強くならなくちゃいけない。
「先輩は、この子のたった一人のパパとして、できるだけのことをしてください。
私はとにかく安静にして、この子を大切に育てますから」