教育実習日誌〜先生と生徒の間〜
先輩の実家で、出産まで静かに過ごすことができた私。
点滴なしでもつわりが止まったのは、やっぱり精神的なものがあったのかも。
私のお義父さん、お義母さんになってくれる予定の先輩のご両親はとっても優しい。
まだ小学生の妹さんもなついてくれたし、リウマチで手が不自由なおばあ様のお手伝いをして、穏やかに日々が過ぎていく。
週末になると先輩が帰ってきてくれて、少しだけ一緒に話せるのが嬉しい。
「見て! 少しお腹が大きくなってきたの」
「……本当だ。ここに俺たちの子どもがいるんだな」
「うん。……トモアキさんと私の赤ちゃん。今は元気いっぱいみたいだよ」
妊娠初期に切迫流産になったけれど、その後の経過は順調で、健診の度に大きくなる赤ちゃんを見るのが楽しみだった。
高校はたったの1か月半しか通えず、お父さんとお母さんを裏切ることになってしまった私。
それでも両親が私の出産を許してくれたのは、私の幸せを一番優先したからだって、お義父さんが教えてくれた。
「元気な赤ちゃんを産んで、抱っこさせてあげることが、今のミウさんにできる一番の親孝行だよ」
お義父さんに教えられた、私の両親の気持ち。
場面緘黙症で、良いお医者さんを求めてあちこちの病院へそれこそ飛行機で通ったこともある私。
環境を変えたくて、15歳で親元を離れるわがままをゆるしてもらった挙句、すぐに妊娠して高校中退した私。
こんな親不孝な私を、すぐに受け入れられるはずはないよね。
病室で会って以来、両親とは会っていないし、電話も拒否されている。
孫が産まれたら、会いに来てくれるかな。
ちゃんと謝らなくちゃ、お父さんとお母さんに……。