教育実習日誌〜先生と生徒の間〜
クリスマスイブに生まれた我が子の名前は「一聖(いっせい)」に決まった。
私によく似た顔立ちの、元気な男の子。
身体が大きいのはきっと、先輩に似たんだと思う。
みんなから祝福されて産まれることができた赤ちゃんを抱っこして、幸せそうな先輩を見ていたら、あの時の選択は間違っていなかったんだと実感した。
私と一聖が病室へ戻って、先輩と三人で過ごす最初の夜。
コットで寝ている一聖を見て、ふふっと二人で笑っていたら。
ドアをノックする音が聞こえ、続いて懐かしい声がした。
「俺の孫は元気か?」
お父さんとお母さんが来てくれた。
「ミウ、よく頑張ったね」と言ってくれたお母さん。
「お前に良く似たいい男になりそうだな」と目を細めたお父さん。
「ミウはもう、吉川家の嫁になったんだから、もう実家へ逃げてこないように、今日まで連絡するのを我慢していたの。
ミウの様子は、吉川さんに知らせてもらっていたけれど、上手くなじめているみたいで良かった……」
お母さんが泣くから、私もまた泣いた。
泣いてばかりの私の横で、一聖が目を覚まして元気に泣いた。
今日からは、私の代わりにこの子がいっぱい泣いて、私と一緒にいっぱい笑うことになるんだね。
4月。
医学生になったトモアキさんと、ママになった私、そして一聖の三人は、大学のそばにある2LDKのアパートで暮らし始めた。
トモアキさんは、お父さんと同じ産婦人科医を目指して勉強している。
私も通信制高校の1年生として、また勉強を始めた。
去年の今頃は、こんな生活を想像もしていなかったけれど。
みんなに支えられて、幸せな家族になることができた私達。
次は、トモアキさんが幸せな家族を作り出すお手伝いができるように、私も精一杯サポートしようと思う。
新しい命を産む側、それをサポートする側、それぞれに課題は多いけれど。
産んで良かったとみんなが思える社会になることを期待しつつ……。
【完】