教育実習日誌〜先生と生徒の間〜
指導教諭の緊張
【健の指導教諭記録】
朝の職員朝会。
うちの学校は、職員室でマイクを使って行われる。
今日は全校朝会もあるので、会議はスピーディーに。
ここではじめて、全教員に実習生のお披露目がある訳だが。
職員室の隣、会議室が実習生の控室となっている。
ここから教頭に先導されて、12名の実習生が職員室へずらりと並ぶ。
時間の都合上、挨拶は代表の一人だけで、あとはそれぞれが……ということになっている。
緊張して固い表情を浮かべた菫が、俺の方を見ていた。
……今日からは、指導教諭。
実習生は挨拶が終わると、それぞれの指導教諭の席へと移動する。
俺の机の横に、菫が座る予定のパイプ椅子が置かれていた。
椅子に腰かける前に、小さな声で言われた。
「二週間、よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします、安西先生」
菫が、目を丸くして俺を見た。
当然だろ、実習生でも『先生』と呼ぶのが、この業界のお約束。
いくら心の中で『菫』と呼んでいても、それは絶対に表に出さない。