教育実習日誌〜先生と生徒の間〜
「それで本当にいいんですか?
ご迷惑をおかけすることにはなりませんか?」
迷惑?
もしかすると、俺との事が明るみに出る可能性を考えているのか?
そんなヘマはしない。
「大丈夫です。かえってそのほうが、安西先生も実習に集中できるかも知れません。
こんなに可愛い実習生が来たら、うちの生徒が騒ぐに決まっていますから」
騒いでいるのは生徒だけではないが、それを言うと菫が余計に意識するかも知れないので、絶対に言わない。
教育実習という、相当な緊張を強いられている場面でも、俺への気遣いを忘れない菫が可愛くて。
つい、立ち止まって菫の顔を見ては、笑ってしまう。
菫がまた、不安げな子犬のように、俺を見上げている。
その顔は反則だ。
何となく聞こえてしまうのは気のせいか。
『先生、はぐはぐして欲しいの』
いつもの甘えた声は……幻聴だよな?
初日の朝からこんなんで、大丈夫なのか、俺。