教育実習日誌〜先生と生徒の間〜
1年3組の教室へ着いた。
ドアを開ける直前、菫に伝える。
「実習生は失敗して当たり前です。
失敗をフォローするのが私の役目ですから、気にしないこと。
どうか、どんどん失敗して、それを教訓に沢山のことを学んでください。
失敗を恐れて小さくなっていては、安西先生らしさがなくなります。
ありのままの『安西菫』で、生徒たちにも向き合ってください。
……きっと、好意を持ってもらえるはずですから」
実習生は失敗して当たり前だ。
それを嫌がる教員も多いが、自分だって失敗しながら育ててもらったんだ、そのくらい覚悟して実習生を受け入れるのが、恩返し、だろ。
給料をもらって働いている俺たちとは違う、まだまだひよっこな妄想女子大生なんだから。
上手くやろうなんて考えたら、何もできなくなる。
俺の好きな、けなげで明るい菫をそのまま出せば、きっと生徒からのウケはいいはずだ。
……良すぎると、それはそれで心配だが。
俺に向かって、静かに頷くその顔は、捨てられた子犬から、名門大学の女学生になっていた。
それでいい。
教壇へ菫を招き入れた。