教育実習日誌〜先生と生徒の間〜
「ノーコメントです」
さらっと菫が答えた。
よし、よく言った!
「「「「えええええ~」」」」
不満げな生徒からの声が響いた。
それだけ、興味を持たれているという証拠だ。
良かったな、既に愛されてるぞ、お前。
『彼氏がいるんだ』などとひそひそと話す生徒の声が聞こえる。
作戦通り。肯定も否定もしないということは、何と都合のいいことか。
助けを求めるように俺を見つめる菫がまた、可愛らしい。
「ほら、安西先生が困ってるだろ。
聞きたい奴は休み時間にでも仲良くなって、こっそり聞きなさい。
時間なので、これで終わり。日直、号令を」
思わず苦笑い。
実際に聞かれたら困るけどな。ま、相手が俺だって言わなきゃいいぞ。
初日の最難関、自己紹介はこうして終わった。
とりあえず、菫はよく頑張った!