教育実習日誌〜先生と生徒の間〜
美羽ちゃんの様子を見たら、もう、顔面蒼白。
きっと、自分と重ね合わせて聞いてくれているせい、だよね?
最後まで聞いてもらえるだろうか?
「1週間遅れて、そろそろ妊娠検査薬でも調べられるっていう時期になった時、何度もそれを買いに行こうと思ったんだ。
わざわざ、家や学校からかなり離れたドラッグストアまで行ったりして。
でもね、お店に入っても、それを買うことができなかったの……。
やっぱり、現実を知るのが怖くなっちゃって。
大好きな人との間にできた赤ちゃんだから、絶対に守りたい。
でも、そのせいで、大好きな人の将来を変えてしまうんだって思ったら、どうしたらいいのかわかんなくなっちゃったの。
彼の将来と、赤ちゃんの命。
どっちも大事で、どっちも失いたくなかったから。
私はもう、大学中退でも仕方ないって思った。両親には本当に申し訳ないけれどね。
ただ、彼のことを考えたら『今はまだその時期じゃない』っていうことが明らかだったの」
美羽ちゃんの目に、みるみるうちに涙が浮かぶ。
スカートのひだを触っていた手の甲に、一滴。