セピア色と唄う魚
10月の風にのせて
はじまり
風が冷たくなった。公園では色を茶色に変えた沢山の葉が風に吹かれ駆け回っている。
僕は歩きながら周りを一つ一つ見回した。アスファルトの道、その脇に生える雑草、誰の家かは知らないけれど庭から顔をだす猫の瞳。どれも秋の冷たい空気をまとい、色がくすんで見える。そして、真っ黒の空に浮かぶ金色の三日月を見つめ、鼻から思いきり空気を吸い込む。
金木犀のかすかな香りと昼と夜の境目の秋独特の冷たい空気が一気に僕の中を駆け巡っていく。
好きだ。何時間でも突っ立っていられるくらい、この季節が好きだ。何でだろうといつも考えた。リアルさが全くなく、ポンとどこか違う世界に来たような、そんな気持ちになる。それが好きなのかな。誰かがいても、僕しか存在してないような。孤独なようでとても心地良い感覚。いつもうるさく感じる車の音も気にならない。
「んー最高。」
目を瞑り、もう一度思いきり空気を吸い込み、吐き出すのと同時に空を見あげた。
綺麗な満月が浮かんでいる。まん丸で少し潤んでいるような美しい満月だった。雲がないことがより月の美しさを鮮明にさせた。
「ふぅっ」
月の美しさに溜め息を落とし、僕は視線を戻すとハッとする。一瞬無音のザワザワとした気持ち悪い感覚に襲われた。頭の中は真っ白のまま、もう一度、ゆっくり空を見上げた。
そこには、僕を嘲笑うかのような細い三日月が浮かんでいた。
鳥肌がたった。
見間違い?もう一度見上げる?いや気味が悪い。見る必要はないよ。そんな訳ないから。僕は前だけを見て足早に家に向かった。
見えない何かが僕にギュッと絡みついてくるような気がする。闇がもぞもぞと動いているような気がする。ついさっきまで心地良い空気を感じていたはずなのに、僕の体は緊張でガチガチになっていた。
この日から、始まったんだ。
僕は歩きながら周りを一つ一つ見回した。アスファルトの道、その脇に生える雑草、誰の家かは知らないけれど庭から顔をだす猫の瞳。どれも秋の冷たい空気をまとい、色がくすんで見える。そして、真っ黒の空に浮かぶ金色の三日月を見つめ、鼻から思いきり空気を吸い込む。
金木犀のかすかな香りと昼と夜の境目の秋独特の冷たい空気が一気に僕の中を駆け巡っていく。
好きだ。何時間でも突っ立っていられるくらい、この季節が好きだ。何でだろうといつも考えた。リアルさが全くなく、ポンとどこか違う世界に来たような、そんな気持ちになる。それが好きなのかな。誰かがいても、僕しか存在してないような。孤独なようでとても心地良い感覚。いつもうるさく感じる車の音も気にならない。
「んー最高。」
目を瞑り、もう一度思いきり空気を吸い込み、吐き出すのと同時に空を見あげた。
綺麗な満月が浮かんでいる。まん丸で少し潤んでいるような美しい満月だった。雲がないことがより月の美しさを鮮明にさせた。
「ふぅっ」
月の美しさに溜め息を落とし、僕は視線を戻すとハッとする。一瞬無音のザワザワとした気持ち悪い感覚に襲われた。頭の中は真っ白のまま、もう一度、ゆっくり空を見上げた。
そこには、僕を嘲笑うかのような細い三日月が浮かんでいた。
鳥肌がたった。
見間違い?もう一度見上げる?いや気味が悪い。見る必要はないよ。そんな訳ないから。僕は前だけを見て足早に家に向かった。
見えない何かが僕にギュッと絡みついてくるような気がする。闇がもぞもぞと動いているような気がする。ついさっきまで心地良い空気を感じていたはずなのに、僕の体は緊張でガチガチになっていた。
この日から、始まったんだ。