恋の相手はメイド君!?
「お父さん?」


「そうや。
欄は、意外と寂しがりやからな、俺がおる間はいっぱい甘えてもええよ」



なんだ、それは……。


お父さんなんて、千尋にやってほしいわけないよ。


確かに千尋の側にいると、タメのくせに落ち着いていて包容力があるせいか、しょっちゅう甘えてしまうけど。


意味が違う。


あたしは、千尋に彼氏になってほしいのに。


ムッと結んだ唇の訳を、千尋は理解してくれなかった。


あたしが照れていると勘違いしたまま、暫く甘やかして、その後昼食の支度なんて始めてしまう。



手際よく支度していく千尋を見ながら、あたしはこっそりと寝室に行った。



千尋に見られないようにと、ずっとカバンの中にいれっぱなしにしてあった愛読書。



「えっと、好きな人にお父さんになってあげると言われた場合は?」


パラパラとページを捲る。


ない。


「あるわけないわなぁ」



普通に考えても、お父さんなんて台詞なんて出さないよね。


ベッドに身体を預けて、膝の上に置いた雑誌を適当に読んでいった。
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