恋の相手はメイド君!?
どうしたんだろう?

ジーッと黙ったまま見つめてくる。


何もないはずなのに、何かあるのかなもしれないと期待にドキドキした。



「…初めてやな」


初めて?




「今まで、見送ってばっかやったから……。
見送られるんは、初めてや」


照れくさそうに帽子を深くかぶり直した千尋。


そうか、仕事が仕事なだけにこういうのは新鮮なんだね。


「なら、これからはいっぱい見送ったるよ!」


「…いや、そりゃ無理やろ物理的に。
欄がおる時に俺が出かけること、滅多にないしな」


「煩いなぁ。
見送ったるいうたら、見送ったるの!
もうっ、はよ行きや!」



神経に考え込む千尋の背中を押してやると、ドア口に手を置いて千尋が踏ん張っていた。


力強く押してるのに、ビクともしなくてむかつくから睨み上げると、ニコリと笑みを向けられた。




「はよ行かな、時間無くなるやんかっ」


「焦らんでも、ちゃんと連れていったるがな。
それより……」


くるりと向き転換して、あたしと向き直ると背を屈めて顔が近づいてきた。
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