恋の相手はメイド君!?
「破廉恥て、また古風やねぇ」


「質問に答えんかいっ!」


話を反らすな!


千尋は掴みにくい性格らしい。


ボケっとしてるというか、間が抜けているというか。


「言うたよ。

『抱いて!めちゃくちゃにして!』って。

もう、恥ずかしかったわ」


それは、あたしの台詞だ。

「ありえん…」

「事実ですからぁ」


のほほんとしている千尋が恨めしい。


ていうか、あたしはそこまで追い込まれていたんだ。

見知らぬ男に、あんな事を言うほど彼氏に振られた事がショックだったんだ。



ガタンと、力なく椅子に座り直した。


なにやってんだが、自分があほみたいで泣けてくる。















「心配せんでも、やってへんよ」


「え?」


「ホンマに抱いてって言われたし、驚いたけど。

俺は、泣いてる女の子を抱く趣味はないから」



ニヤリとも、ほわんとも笑わず真剣な表情を向けられる。


初めて見た千尋の真剣な表情に、あたしはそれが事実なんだと確信できた。


会ってまだ二時間そこらでも、何となくわかる。


千尋は、人を傷つける人間じゃないってことは。


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