恋の相手はメイド君!?
あれが普通なのか?


あたしには、そうは思えない。



だから、千尋の言うこと全てが引っかかってしまう。


モヤモヤと渦巻いて、駄目だと分かっていながらくちばしってしまう。




「せっかくのデートやのに……。
あんなおばさんがええなら、あっちといちゃこいてたらええやんかっ!」


「…欄…」



そんな顔で、あたしを見ないでよ。


まるで千尋が悲しいみたいな……あたしが、悪者みたいだ。


目を反らし溜め息をつかれた。


ズキンと、胸が痛む。



何も言わないのが、逆に辛いよ。


文句でも言い訳でも、何でもいいから言ってほしいのに、千尋は向きを変えて海を見つめてしまった。



大きな千尋の背中は近い場所にあるのに、今は物凄く遠くに感じる。







「……何か言うてよ」


今何を思ってるの?


あたしのことウザイ女とか思った?


だから、溜め息をついたの?



海から吹く風に千尋の髪が上がる。


それと同時に、千尋は言った。




「俺は、欄のためにとかで仕事のやり方を変えるつもりはあらへん」

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