恋の相手はメイド君!?
どれくらい時間が経ったかわからない。
空が茜色に変わりだした頃、あたしはやっとその場から動けた。
沢山の人に見られたけど、都会の人は冷たいと思った。
誰一人として、声をかけてくれない。
田舎から出て来て、仕事ばかりしていたあたしには、まともな関わりがあるのは皐月だけ。
あたしには、都会はむかないのかもしれないなぁ。
「……あぁ、また皐月に付き合ってもらおうかな」
今夜もやけ酒だ。
惨めな女の辿る先に、幸せなんてあるのかな。
先輩には遊ばれて、千尋には騙された。
あたしには、学習能力というのがないらしい。
見た目がいい男は駄目だね。
沢山泣いた後は、開き直るしかなかった。
早く忘れよう。
無理だけど、忘れた方がいい。
過剰になって千尋に迫ることはしたくなかった。
これ以上惨めになりたくないのと、きっと千尋に会ったら泣いてすがりそうだから。
あたしだけを見て――。
そう言って泣いてしまうだろう。
そんなことしたら、千尋にうざかられるだろうから嫌だった。