恋の相手はメイド君!?
「欄を好き言うた気持ちはホンマや。
やけど、会社にバレるわけにはいかんくて
やから、欄以外の客も、たまに引き受けてた」
「それは、浮気やないの……?
それは、裏切ってない?」
「浮気したつもりはないし、裏切ったつもりもない」
背中越しに聞こえる。
千尋の真っ直ぐ声。
あたしの中で
千尋を信じたい気持ちと
千尋を信じきれない気持ち
二つが混乱してる。
どうしたらいいのかわからなくて、唇を噛み締めた。
鉄の味に、不快感が積もる。
「千尋は……、あたしをホンマに好きやったの?」
女のあたしと
お客のあたし。
いったい、どっちが好きだったの?
「好き……やから、最初は欄の側にいたりたかったけど、嫌になった」
「いみ……わからんよ」
「最初の契約が終わる1日前に、俺は面と向かって欄に別れを告げることが出来そうになかった。
やから、俺は逃げたんや」
そういえば、千尋との最初の契約はクリスマスまでの一週間だった。
だけど、クリスマス前の夜。
千尋は、いなくなったんだ。