素直に
第1章
     1
「栄司」


「何?」


「これから学内のカフェでお茶でも飲まない?」


「いいね。……君、ケーキ食べたいんだろ?」


「ええ。熱々のホットコーヒーにケーキって合うからね」


「じゃあ、すぐ行こう」


 僕は頷き、授業が終わった講堂を抜けて、キャンパスの中にあるカフェへと向かった。


 同じ文学部で、専攻も共にドイツ文学という僕と慧子(けいこ)。


 今、ちょうど大学三年で、三年生はどこの学部の人たちでも就活を始めるのだが、僕たちはしていない。


 僕も慧子も大学でドイツ文学などを勉強している学生は就職など到底無理だと思っていた。


 だから就活はお預けだ。

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