素直に
第20章
     20
 やがて数日が経ち、十一月も初旬となった。


 慧子は一定期間休養したお陰で、風邪が治ったようだ。


 僕が朝の幾分寒い時間帯に、彼女のマンションを訪れた。


「おはよう。俺。栄司」


「ああ、おはよう」


 慧子が出てきて、扉を開けてくれる。


 マンション内に入ると、シャンプーした直後の、甘い香りが漂ってくる。


「お風呂入ったの?」


「ええ。数日間、髪とか体洗ってなかったし」


「風邪は治ったんだね?」


 僕が念を押すように訊くと、


「うん。一応ね」

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