素直に
 確かに古いマシーンより、新しいそれの方がいいのはもちろんだ。


 だけど、パソコンを買い換えるだけの予算がない。


 特に文学部の学生で院まで進学する人間たちは圧倒して貧乏人が多くて、僕も例外なしにその一人なのだった。


 歩いてキャンパス内にある学食へと向かう。


 僕自身、授業には欠かさず出席していた。


 もちろん綾邊のドイツ語原典講読など、出席カードだけ出したら即帰る講義もあったのだが……。


 要は大学生でも時間の上手い使い方を考えるのである。


 慧子も無駄だと思える講義には行かないことがあったし、僕もそういったことは痛感しているのだった。


 大抵研究室にいるか、自宅のパソコンを使って文献を集めたりする。


 大学に勉強に来ていても、嫌なものは嫌だからだ。


 僕も慧子も、そんなことは分かりきっていた。

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