素直に
 慧子は風邪の症状が完全に治まっていたので、安心して講義に出ているようだ。


 僕も授業があるときは、決まってキャンパス内で落ち合う。


 研究室で頭を使い、午後三時ぐらいになって互いに疲れてしまえば、カフェでお茶を飲む。


 僕たちは仲良くやっていた。


 パソコンもあればケータイもあって、コミュニケーションツールは絶えない。


 僕も会えない夜は眠る前に欠かさずメールしていた。


 短文で二、三行ぐらい打って、文面を確認してから、送信ボタンを押す。


 そんな日々が続いた。


 何気ない風に。


 そして街が一気に冬へと移り変わる。


 まさにここの街にも冬が下りてきたなと感じさせるぐらい……。


 街は染まりつつあった。

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