素直に
い。


 没後に作品がかなり売れて、遺族に相当な額の印税が入ってきているのも知っている。 

 作家というのは実にこういった人が多いのだ。


 破天荒で、派手な生き方をする人間が。


 それに僕も研究対象であるゲーテとは全く違ったものを、この太宰の小説に感じていた。


 どこかしらで読者を挽き付ける魅力があるのだろう。


 慧子も全くの畑違いである太宰の小説に関して、一通りは知っていた。


 彼女は昔から文学少女で、住んでいた町にある図書館の本はほとんど読み尽していたようだ。


 僕がページを開いて、太宰の作った破滅劇に目を通していると、慧子が、


「太宰治?」


 と訊いてきた。


「ああ。今ブームだろ?」

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