素直に
 いくら医者の娘であったにしても、私立大学の学費は高いらしい。


 それに僕自身も今更、認知症に掛かっているオヤジとは会わないし、事実上絶縁していたのだったから……。


 人間関係は作るのは簡単だが、壊したら修復するまでに時間が掛かる。


 と言うよりも、一度壊れてしまったら直せないのが普通だ。


 僕はこれからも院まで上原先生にお世話になるだろうし、下手すると、院を出た後のことまで頼み込むかもしれない。


 慧子も同じ考えのようだった。


 最初はよくて助手ぐらいからだろう。


 この世界は一際厳しいのである。


 ドイツ語一つ取っても、かなり奥が深いのだから……。


 おそらく一生涯掛けて追求していくことも多いだろうと思われた。


 だけど僕自身、慧子と歩んでいくつもりでいたし、実際学者同士の結婚などもケースとしてはたくさんあるようだ。

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