素直に
 そういった場合、当然ながら共働きになるのだし、彼女がもし僕の分身を産んでくれるようだったら、産休なども視野に入る。


 僕は慧子に自分と血を分けた子供を産んで欲しいと思っていた。


 些細(ささい)な幸福が、実際一番ありがたい。


 そういったことは痛感している。
 

 互いに学問をやっている人間として。


 それに学生と言っても、二十歳を過ぎているのだから、立派な大人同士であることに変わりはなく……。


 僕たちはキャンパスを出、各々の自宅へ向かって歩き出した。


 互いに疲労してはいる。


 だけど連日、研究に没頭できる環境にいるのは言わずもがなだったし……。


 充足感は大いにある。


 もちろんそれに比例するようにして、愚痴も漏れ出てしまうのだが……。


 でも大学でドイツ語を研究し続ける学生など、学問以外のことに関しては、所詮その程
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