素直に
第26章
     26
 僕は一歩一歩、慧子と共に街の道路を踏みしめて歩きながら、急速な冬枯れを感じた。


 実の妹の由梨絵のことが気になっている。


 一人暮らししているのだが、妹も飲んだくれたオヤジのことはかなり嫌っていて、今でも会いたくないと言っていた。


 たまにケータイに連絡が入ってくるのである。


 僕も血の繋がった妹からの電話には出ざるを得ないので、忙しいときはいったん手元の作業を止めてフリップを開き、受信ボタンを押す。


 酒に溺れて、亡き母に暴力を振るい続けたオヤジには反省の色が全くない。


 それに母も今から十年前、急性の脳梗塞で倒れて、病院に運び込まれたのまではよかったものの、手遅れで亡くなっている。


 僕自身、いつか由梨絵と会いたいと思っていた。


 もし時間があれば、だったが……。


 妹は今、北海道にいて、つい最近メールで住んでいる街に雪が降ったことを言っていた。


 あっちは寒いだろうと思う。
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