素直に
 西日本でも九州にある僕の街と違って。


 確かに九州も冬になると寒い。


 だけど由梨絵のいる北国に比べたら、断然過ごしやすい。


 僕は二〇一〇年の十一月下旬に差し掛かる前に、卒論に使う資料を一通り集めておこうと思って、研究室に通い詰めた。


 もちろん家庭教師のバイトもしながら、だ。


 先日、勇太君のお家にお邪魔して、本人とご両親と僕の四人で面談した。


 僕は正直なことを申し上げた。


「今のご子息の学力じゃ、秋光大も征西大も無理です」と。


「そうですか……」


 母である裕香子が言葉を濁す。


 脇でじっと聞いていた父親の哲史も教師だから、プライドは高い。


 僕が一言一言言葉を選ぶようにして言うと、勇太君が突然、

< 136 / 204 >

この作品をシェア

pagetop