素直に
「美味しそう」


「俺、普段昼は学食で食べてるけど、朝晩は自炊なんだ」


「慣れてるのね?」


「ああ。作った方が金掛からないし」


 僕が料理の載った盆を持ち、リビングへと移動する。


 ちゃぶ台に料理を置いて、箸を並べ、二人で揃って食べ始めた。


 食欲の秋に手料理は欠かせない。


 僕たちは仲良く食事を取った。


 僕も慧子も専攻はドイツ文学で、学内に綾邊(あやべ)という悪い教官がいるのを知っている。


 綾邊は基本的にちゃんとした授業をしない。


 下手すると出欠だけ取って、すぐに授業を終わりにするようなこともあった。


 今、大学に授業評価というものがある。


 行なわれている授業そのものの質や、教員の教え方などを学生がアンケート形式で投票
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