素直に
第27章
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 ホットコーヒーは頭の中を冴えさせる。


 僕はエスプレッソで淹れてもらって、セットに付いていたケーキを食べながら、お茶を飲む。


 慧子もケーキを食べ、時折カフェの窓際の席から見える冬枯れたキャンパスに目を移していた。


 僕たちは不思議なぐらい仲良くできている。


 お互い譲り合うべきは譲り合って、だ。


 それに話が合う。


 同じドイツ語学科にいるのだから。


 僕も慧子も日常会話程度のドイツ語なら喋ることができた。


 さすがにペラペラとまでは行かなくとも、ある程度流暢(りゅうちょう)に話が出来る。


 僕は今年のクリスマスも彼女と一緒に過ごせると思っていたし、実際過ごす予定だ。


 カフェでコーヒーとケーキを口にして、僕たちは満足していた。
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