素直に
 今年の後期もほぼ終わりで、ドイツ語原典講読担当の綾邊の顔を見ることもなく済む。


 あの男を見ていると、あんなにいい加減な感じでも大学の教員になれることが分かったし、僕ももちろん、慧子もかなり嫌がっていた。


 出席カードだけ集めて、適当な話さえすれば、後は何もなくて終わりだったのだから……。


 僕たちは来年四月で四年生になるが、就活する気にはならない。


 院に進学する以上、院試の勉強をしないといけなかった。


 卒論にももちろん取り掛かるし、必須科目の授業は受け続ける。


 来年四月上旬に行なわれる科目の登録数はかなり減るだろう。


 教養科目などの単位は全て取り終わっていたので、僕たちにも余裕が出来る。


 上原ゼミは相変わらず好評だった。


 僕たちも後期授業の終わりとなる十二月二十日前後まで講義を受けた後、冬休みは年明けの後期試験の勉強をしながら、互いに一緒に居続ける予定だ。


 お互い実家には帰らない。

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