素直に
 僕自身、そういったことは普通に感じていた。


 こうやってお茶を飲みながらでも、十分意思疎通が出来ていたのだし、実際、僕は彼女を想うからこそ、自分たちのしている恋愛を妨害するような輩とは一切没交渉(ぼっこうしょう)なのだ。


 互いに素直になれているから、僕たちは何も怖くなかった。


 返って嫌なことを受け流せるぐらいまで精神的に成長している。


 多少の葛藤はあったにしても。


 毎日研究室に通い詰めだったが、僕も慧子も私大で高い学費を払っているから、元を取るためにしっかりと研究施設を利用していた。


 研究室に設置してあるパソコンには、ほとんど全てのドイツ語関連の文献が網羅(もうら)されている。


 准教授である佳久子たちが専用ソフトを買ってきて、入れ込んだのだろう。


 僕たち学生はそれを利用しながら、研究に没頭していた。


 学校に持っていくものはノートと筆記用具、それにデータを落とすフラッシュメモリだけだったし……。


 それにキャンパス内で違う場所にいたとしても、ケータイのGPSで探し、メールなど
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