素直に
細かい点まで突っ込んでくるのだ。


「どういった経緯(けいい)でその研究報告が成り立つのか?」や「ちゃんと研究対象を的確に絞り込めているか?」などを訊いてくる。


 僕たちは気を抜けなかった。


 万全に準備しておかないと、僕も慧子も上原先生の質問に答えられないからだ。


 僕もさすがに研究発表前になると、図書館で必要な文献を借りてくるし、慧子もネットなどを使い、最新のドイツ文学研究に触れていた。


 今、ネットのサーチエンジンがあるので、研究するには文献はほとんど必要なかったのだが……。


 上原先生は六十代後半で、パソコンはキーの配列が昔のワープロと同じなので、何とか打てるようだった。


 だけど、基本的に紙の本に書いてある情報の方が多い。


 僕も慧子も珍しいと思っていた。
 

 というよりも、学生皆が珍しがるだろう。


 今時、古くてカビの生えたような文献などを見るよりも、パソコンに取り込んで、検索
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