素直に
 だから、専門に関しての小論文の方で点数を稼いだ方がいい。


 僕たちはそう思っていたから、上原ゼミに来れば貪欲(どんよく)に学ぼうと思っていた。


 これが研究職に就くため、院を目指す大学生の実態である。


 過去問のチェックも順次進んでいた。


 僕も慧子も再来年には学部学科を卒業で、院に向かって頑張り続けるつもりでいる。


 確かに同じ研究をするんなら、秋光大よりも断然資料が充実した東都大など首都圏の大学の院の方がいいかもしれない。


 だけど、大学院は大学の延長線上にあるので、基本的に学びやすい場所で学んだ方がいいと思われる。


 もちろん院の全過程を終了すれば、Ph.D.も取れるし、研究生活も続けられて、文句はないのだが……。


 上原ゼミで講義を聞きながら、僕は今後のことを考え続けていた。


 言わずもがなで、手元の資料には絶えず目を落としながら……。


 九十分間の授業が終わると、慧子が、

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