素直に
「そろそろ研究室に戻ろう」


 と言った。


「ええ」


 慧子が頷き、自分のバッグを手に取って歩き出す。


 僕たちは並んで歩き続けた。


 誰がどう見ても、学生カップルだと分かるだろう。


 僕も彼女もお互い心のうちが分かっていたからいいのだ。


 冬も本番となっている。


 この街にも冬景色が訪れる頃だ。


 ふっと空を見上げると、突然雪が舞い降りてきた。


「……雪か」


 僕が呟くと、慧子が手を伸ばして、


「今年最初の雪ね」
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