素直に
 と言う。


「ああ。何かロマンチックだよな」


「栄司もそう思う?」


「うん。冬が来たなって感じる」


 僕たちは舞い出した粉雪の中を歩きながら、季節が冬になったことを改めて思った。


 これから先、寒さがかなり厳しくなるが、僕も慧子も平気だ。


 互いに手を取り合って、熱を移し合う。


 僕は夕方になったら学食に行くつもりでいたし、処方された薬の夕方の分をちゃんと持ってきていることを確認した。


 寒さで凍える季節でも、二人でいられれば無事に過ごせる。


 冬が終われば、また暖かな春がやってくるのだ。


 正月を経て、二月、三月が過ぎれば、再び暖気が漂い出す。


 この街にも過ごしやすい季節がやってくることだろう。

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