素直に
 その頃には僕たちも四年生になっている。


 確かに春になれば、学生たちの就活も盛んになるに違いない。


 でも僕たちはあえて、大学院に進学することを決めていた。


 互いに秋光大学文学部ドイツ語学科に入ってきて、専攻こそ違うものの、同じドイツ語を扱う仕事をする気なのだから……。


 ゆっくりと歩いていくつもりでいた。


 ふっと空を見上げると、雲が広がっていて、その合間から雪が降ってきている。


 僕も慧子も雪に降られながら、研究室に舞い戻った。


 研究室が閉まるのは午後六時半である。


 その時間帯までパソコンに向かい続ける気でいた。


 研究室と自宅マンションじゃ、緊張感が全然違う。


 僕も慧子もそういったことは承知の上で、研究室に詰め続けていた。


 そんな日が数日続く。

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