素直に
 僕たちは各々カバンを置き、パソコンの前に座った。


 必要な個人情報を入力して、フラッシュメモリを差し込み、データを取り入れる。


 僕は慧子に言った。


「コーヒー淹れてくるね」


「ああ、ありがとう」


 立ち上がり、給湯室へと歩き出す。


 ブラックで二人分淹れ、カップを持って、フロアへと戻ってきた。


 研究室の午前中の監督には佳久子がいて、僕たち学生の動向を見続ける。


 正直なところ、あまりいい気はしない。


 だけど佳久子は准教授という肩書きで、僕や慧子、それに他の学生たちをサポートするのが仕事だ。


 大学でも教授と准教授じゃ、雲泥(うんでい)の差がある。


 僕も大学の内情は知っていた。

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