素直に
 研究職を目指す人間は多い。


 それは今も昔も同じである。


 専攻こそ違え、大学に残る人間は山ほどいるのだった。


 Ph.D.まで取得しても、一般企業への就職は到底出来ない。


 院まで行くにはお金が掛かりすぎるにしても、選択肢は限られてくる。


 でも、僕は実家に帰るつもりは全くなかったし、慧子もおそらく同じだろうと思う。


 僕たちの夢は無事博士号を取得した後、大学の研究室で教授や准教授たちのお手伝いをすることである。


 普通の学生じゃ、なかなかそこまでは行き着かない。


 研究職というのは、実にエネルギーを使う仕事なのである。


 僕も慧子もそういったことは分かりきっていた。


 それに普通に就職したんじゃ面白くないから、学校で専門的な研究を続けるのだ。


 今、オーバードクターの学生は多い。

< 178 / 204 >

この作品をシェア

pagetop