素直に
 学位取得時に提出する博士論文は原稿用紙で二千枚とか三千枚とか、それぐらいの分量が要求される。


 僕たちは果たしてそこまで書けるのかどうか、心配だった。


 論文の査定は厳しい。


 それに仮に研究を続けたとしても、お金にならないことの方が多いのだ。


 でも、逆にそれだからこそ楽しめる分野でもある。


 型に嵌まったような生き方をしたくないと思っていたのだから……。


 まあ、日本の大学院は比較的卒業しやすいと言えばそれまでなのだけれど……。


 僕たちは来るべき来年もしっかり頑張ろうと思っていた。


「栄司」


「何?」


「食事取りに行かない?」


「ああ。……俺も腹減ってた」

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