素直に
「顔に出てるわよ。食べたいって」


「そうかな……そこまで露骨に思ってないんだけどね」


「行きましょ」


 慧子がそう言い、データを取り込んでいたフラッシュメモリを差し込み口から引き抜く。


 そしてカバンに入れ、歩き出す。


 すっかり冬枯れていた。


 僕たちは葉がすっかり舞い落ちてしまった木々が並ぶキャンパス内を歩きながら、学食へと向かう。


 食事を取れば、また力が湧いてくる。


 その繰り返しで研究に没頭できるのだった。


 僕はまだ自律神経失調症の薬を飲み続けているが、今手元にある分を全部飲んでしまえば、再度秋光大学付属病院に行く必要はないだろうと思われる。


 要は風邪を引いたような感じで、自然と治ってしまう。


 僕と慧子は手を繋いで、歩き続ける。
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