素直に
 僕たちは二〇一一年の五月下旬に卒論の題目を提出した。


 そして上原ゼミに出席しながら、卒業に必要な科目は全て受講する。


 教養科目がないから、その分、楽だったが……。


 ちなみに四年生時のドイツ語特講(とっこう)は准教授の佳久子が担当だった。


 毎週水曜日の三限目に顔を合わせるのだが、僕はあくまで割り切って、授業を受け終わったらすぐに帰っていた。


 佳久子とのことはもういいと思っている。


 あれは教官である佳久子が一方的にやったことだから、これ以上気に留める必要もないだろうと思われた。


 確かに佳久子は学内じゃマドンナ教員で通っていたのだが、僕は過去を振り払いたいと思っている。


 知識は着実に体系化(たいけいか)されつつあって、僕も昔に比べると、だいぶ力が付いてきたなと感じていた。


 さすがに研究室にパソコンが置いてあるので、図書館に通うことは無きに等しくなったのだけれど……。

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